先月に引き続き2月21日にRSA-Japanさんの特別講座、基本のキホン(ハウスクリーニング&石材編)に参加してまいりました。
ハウスクリーニングに関しては昨年の本講座「復元型ハウスクリーニングコース」を受講済みなのでそれの復習もかねて…、石材に関しては興味はあるものの未だ未知の世界なので、4月の講座を受講する前に予習をかねて参加させて頂きました。
ハウスクリーニングを生業とされている方々に於いては両方とも仕事に直結するジャンルでありますので興味津々かと思います。そんな方々のために私の見てきたこと、感じたことを書いてみたいと思います。何かの参考になれば幸いです。
会場
今回は前回の会場とは違って新横浜駅から近い貸会議室で行われました。受講者の数とお部屋の広さがちょうどよい塩梅で、しかも喫煙者には嬉しい「喫煙ルーム」が同じフロアーに存在しており、やはりこのあたりは鹿田先生や小山先生の猛烈なプッシュがあったのだろうなと心の中で先生方に合掌させて頂きました…。
コインパーキングもビルの目の前に結構な広さのものがあり、日帰りで来られる方においてはそこに停めるのが良いかと思います。お酒が好きで一泊される方は、やはり少し歩きますが横浜線を渡った向こう側に停めるのが安くて良いと思います。24時間で1600円打ち止めが相場のようです。
話は前後してしまいますが、講座終了後は任意での懇親会が行われましたが、今回も美味しい料理を頂くことが出来ました。しかも会場から道路を渡ってすぐのところで、こんなところにもRSAさんの御配慮が感じられて嬉しかったです。
1時間目(総論・顧客満足度)
1時間目の授業はハウスクリーニングの総論的な内容でした。講師は千坂先生です。
どの業界でも同じことなのでしょうが、お店を立ち上げてその商売を5年10年と続けていくのは本当に大変なことです。私も独立当初は「もうダメかもしれない…。」なんて散々打ちのめされました。そんな時40年も50年も続けている近所の八百屋のおっちゃんを見て「すげぇな…。このオヤジ…。」と心の底から尊敬したものでした。
そのオッちゃんと同じくらいの年代になって振り返ってみると、やはり地に足の付いた足腰の強さを身に付けることこそ一番大事なことなんだと分かりました。
とかく若い時分は会社の規模や売り上げなど派手できらびやかな部分に目が向きがちですが、私達の仕事の目的は金儲けだけではないと思います。どこまでいってもお掃除というサービスを提供してお客様に喜んでもらう。そしてお客様に支えてもらって、それにまた感謝してその恩に報いていく…。その喜びの連鎖が不安の無い将来を約束していくものなんだと人生の後半戦に突入した今になってはつくづく感じるものです。
私も若い頃はとにかく売り上げ至上主義だと突っ走っていました。しょせん従業員ゼロの個人商店ですから売り上げは年間5000万円で打ち止めでしたが…。それでもその売り上げを達成するためには見かけの綺麗さと徹底的に無駄をそぎ落としたマニュアルを協力会社さんに強制して成果を叩き出しておりました…。
けど、それってCS(顧客満足度)とは正反対なんですよね。しょせん見かけだけ綺麗なニセモノは本物には勝てない。
本物を見抜く人々に認められて、そしてそんな本物のお客様方に応援してもらえる会社になっていくこと。それこそが絶対に崩れない不動の将来を築くことなんだと思います。
その具体的な方法論を千坂先生は具体例を持って教えてくださいます。今回はお試しの特別講座でありますから細かい部分にまでは触れられませんでしたが、正式な本編の講座では痒いところまで手の届くレクチャーがありました。
会社の将来に一抹の不安を感じている方は是非ともCSの達人である千坂先生に教えを乞うことを私はお世辞抜きでお勧めします。
2時間目(石材)
2時間目の授業は石材に関するもので、講師は小山先生でした。
私はまだ石材に関する講座を受講していないため今回の講義は真っ新な気持ちで拝聴させて頂いたのですが、私たちが掃除屋として今後直面するであろう問題と、それに対応する際に気を付けなくてはいけない数々のポイントを教えてくださいました。
私は在宅の仕事が少ないためすぐに石の仕事に直結するかは分かりませんが、以下のようなシステムキッチンの天板やシンクの底の傷を修復する仕事は無尽蔵に発生する環境におりますので、取り急ぎこれを何とかしたいとの思いが強くありました。
本物の大理石や御影石の研磨から比べればこんなものチョロい分野なのでしょうが、このキッチンが出てきた当初は「また厄介なものが出てきちゃったな…。」と内心穏やかではありませんでした。ステンレスシンクならば手でも磨けば何とか格好はつきますが、人工大理石の場合は機械を使う必要があるでしょうし、そもそも研磨なんてものは全く分からないのですから、今は良いけど数年経って天板やシンクの底が傷だらけになって光沢を失ってしまったらどうしよう…。それ迄には何とか復元できるだけの技術を身に付けなくてはいけないな…。と本気で思っておりました。
その一方で、この人大のシンクもそのうち流行が終わってまたステンレスシンクのみの時代に戻るんじゃないかな?なんて淡い期待をしておったのですが、賃貸の物件でもファミリータイプの物件ではどんどんこの人大のキッチンに取り換えられていき、これは本当に研磨の技術を身に付けないと仕事が回って来なくなるぞ…。と焦る気持ちで一杯でした。
そんな折にRSA-Japanさんが石材研磨の講座を開いていると知りまして、「これはやるっきゃない!」と背中をドンと押されたのが昨年の夏でした。しかしながら10万弱の費用をポンと右から左に出せる甲斐性が無い私は次回の石材研磨講習まで待つしかないなと諦めたのでした。けど…、石材は来年に回したとしてもここに集まっている先生たちが何を持っていて何を教えてくれるんだろうという好奇心は日々増していく一方でした。
気が付いたら翌月に開催されるハウスクリーニングの講座に申し込んでおりました…。
ってなわけで、私にとってはハウスクリーニングの講座よりも石材の講座の方に気持ちは強かったのですが、結果的に石材よりもハウスクリーニングのいろはを先に学ぶことになったのです。けれども今となってはこれで良かったと実感しております。石材の仕事はいずれ取ることになると思いますから決して無駄になることはないと思います。けど実際に毎日こなしているのはハウスクリーニングなわけですし、学んだことの全てが翌日からバンバン活かされてくることになったのは非常に有難く想定外のプレゼントでした。
話が石材からそれてしまいましたが、実はこのハウスクリーニングの講座を受けて実感したのは「理論に則った技術」というのは最強だということでした。
長年現場で仕事をこなしていれば、自ずと「かくすればかくなる」という理屈は分かってきます。またネット社会になった現代に於いては、ネット上にあらゆる情報が真偽のほどは定かではないものの溢れかえっております。それらをつなぎ合わせていけば何とか格好だけはつくものなのですが、それでも自力でパーフェクトな境地に至るのはなかなか難しいものだと私は思います。
たとえばステンレスシンクですが、これを綺麗にするにも理論が先ず初めにあるのです。
これは本日手掛けた現場ですが、アルカリ洗剤とクリームクレンザーでさらっと洗った状態がこれです。多分一般の奥様方の日々の清掃ではこれが限界ではないかと思います。しかしながらよく見ると変色のような黒い跡がそこかしこに残っております。
この汚れの正体が何なのか、それを落とすには何を使ってどうすれば良いのか…。
これが理論なのです。
この汚れの正体はカルシウムスケールとシリカスケールの複合体です。ですから復元するためにはカルシウムスケールを先ずは除去したうえでシリカスケールを取り除いてあげれば傷は除去できないものの、汚れだけは完全除去して新品の状態に戻せるのです。
先ずはカルシウムスケールを溶かす洗剤で洗ってあげます。
こんな感じに変化しました。各所をズームアップすると…、
こんな感じになりました。かなりサッパリしましたよね。けれどもまだ黒いモヤモヤが残っております。このモヤモヤを取るのに苦労している掃除屋さんは多いかと思います。それは当たり前の話なんです。だってこの黒いモヤモヤはフッ化物でなくては溶けないシリカスケールだからです。ですからフッ化を使わずに除去するなら研磨しか選択肢は基本的に無いというのが私たちの常識であったわけです。しかし傷を付けずに汚れを除去するという課題をクリアーするためには研磨は出来ません。さればどうするか…、フッ化以外にもピンポイントでシリカを攻略する研磨剤を使えばそれは可能になります。それらを使ってシリカスケールを完全除去したのがこれです。
使用したのはSMS-Japanさんの洗剤1種類と研磨剤2種類のみ、擦った道具はボンスターと白パッドのみです。
付着している汚れが何なのか。そしてそれを落とす洗剤は何なのか。それをどういった順序でどのようにアプローチすれば効率よく落とせるのか。
それらの理屈を完全に理解して腹に落とし込んでいくならば、後は簡単なんです。
そのような知識と技術を教えて下さるのがRSA-Japanさんの講座だと思います。今回は座学のみで時間的にも実技の時間を設けることが出来ないため、大事なポイントのみを口頭でお伝えされていただけですが、その内容は今後実際に現場に出向いた時にすべてが活かされてくるものだと思います。
私は石材に関してはこれから学んでいく状況ですので、今回の小山先生のお話は実際の現場を思い返して理解を深めるという形態はとれませんでしたが、昨年の回復型ハウスクリーニング講座を受けた上で千坂先生や大野先生のお話を拝聴すると、今回の特別講座は座学のみの短時間講座とはいえ、大事なエキスがふんだんに詰め込まれたものだと自ずと理解しました。
来月は実際に二日間にわたって行われる石材研磨の講習を受ける予定ですので、実際に機械を手にして、素材に触れてみて今回の小山先生の講義がどれだけ重要なことをお話しされていたのかを確認してこようと思っております。
3時間目(ケミカル)
3時間目はケミカル(洗剤・薬剤)に関するお話で、講師は大野先生でした。
お掃除とは洗剤と道具を使って汚れを除去していく行為ですが、その大事なファクターである洗剤や薬剤に関する講義でした。
掃除屋さんとして活動している私たちは少なくとも「この汚れにはこの洗剤。」とか、「ここまで酷い汚れにはこの薬剤をこういった手順で落とすしかないな。」といった、基本的な知識と経験に基づいた技術を多少は持ち合わせているかと思います。
けれども同じアルカリ性の洗剤でも何種類も存在し、その性格や性質までを理解したうえで適材適所にパチンと合う洗剤をあてがって、ケミカルの力だけでほぼ汚れを溶かしてしまう力量を持っている掃除屋さんは少ないと思います。
また同じ現場のキッチンの換気扇でも、その時の現場の状況に応じて敢えて弱い洗剤から使用して、汚れを緩くしつつ同時並行で他の作業を終わらせていってしまうといった技術も、洗剤や薬剤を熟知して引き出しを多く持っていないと叶わないことかと思います。
アルカリ洗剤でさえこうですから、これが酸性洗剤になると結果はもっと端的に出てしまいます。
その辺りの基本的なお話を大野先生はしてくださいました。受講生の方においては初めて聞く洗剤成分の名前やその性質がふんだんに出てきましたので、頭がパンクしそうになったかもしれませんが、どれもが非常に大事なお話で、それらは今は完全に消化できなくてもこの後実際に現場に戻って色々と試してみると必ず理解できるものですし、かつ御自身の技術は飛躍的に伸びていくものだと思います。
また大野先生のお話の中では「綺麗にするための基本的な理論」にも触れられていました。
これは掃除屋さんとして多少の時間を費やすと誰もがその中の一つや二つには気が付くものですが、その全体像を把握するのはなかなか厳しいかと思います。それらを完全に掌握したうえで現場の状況に応じてこの理論を応用してアプローチを考えていくと、たとえ難攻不落な汚れに見えても何とかしてしまう凄い掃除屋さんへと変身していくことが可能ではないかと私は思います。
今回はあくまで短時間での座学でしたので具体的な洗剤名やそれらを使ってどう落としていくのかなどの具体例がありませんでしたが、本編の講座では各成分を含む代表的な洗剤や、それを使ってどう汚れを落としていくかの具体的な事例を教えてくださいます。私達が知りたい情報を惜しげも無く教えて頂けますので、今よりも一歩でも二歩でも向上したいとの気持ちをお持ちの方は是非とも正式な講座の方を受講されると良いかと思います。
フレンドリーな学校
以前もお話し致しましたが、RSA-Japanさんの雰囲気は独特なものがあります。バブルがはじけてギスギスした世知辛い世の中になって久しいものですから、それがスタンダードになってしまった方が殆どかもしれませんが、この学校は「俺だけが儲かればよい。」といった独善的な雰囲気は微塵も感じられません。
一人でも多くの同業者さんに確かな知識と技術を伝授して業界の底上げを狙っていく…。
ひたむきに頑張っている掃除屋さんには老若男女を問わず応援していく。
そんな想いがヒシヒシと伝わってきます。たぶん代表である尾上先生の信念が素晴らしい講師陣を引き寄せ、その先生方の人間性がまた真面目にコツコツと努力する誠実な生徒さん達を集めているのだと思います。
表現はちょっとスピリチュアル的になってしまいますが、「すごく良い波動を感じる集まりだな。」というのが現在の正直な感想です。
生徒さん達は既に掃除屋さんとして活躍している方々が殆どだと思いますが、RSAさんの理念に賛同して集まってきている部分も多大にあるかと思います。それぞれ個性ある掃除屋さん(アーティスト)が崇高な理念に賛同して協力している姿はまるでこの動画のようだと私はつくづく感じるものです。
たかが掃除屋、されど掃除屋です。
掃除を生業としている人たち全員が笑顔で毎日を過ごせる日が来ることを私も切に願っております。
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